国立教育政策研究所 総括研究官 小倉 康 氏
2008年12月1日
国際比較から見た日本の理科教育の研究に携わってこられた小倉康氏(国立教育政策研究所)に、日本の子どもたちの理科学習への意欲向上についてお考えを伺いました。

小倉 康 氏
国立教育政策研究所
教育過程研究センター
総括研究官
PISA調査、TIMSS調査など大規模学力調査を担当。専門領域は科学教育で、科学的リテラシー、学習意欲、理科指導法、諸外国の科学カリキュラムなどを研究。OECDの国際専門委員、日本科学教育会理事などを務める。 |
–日本の理科教育の現状には、どのような課題があるでしょうか。
新学習指導要領で、「学ぶ内容と職業とのつながりについての意識を高める」指導を行う、という方向性が出ました。その背景の一つに、「PISA調査」(OECD生徒の学習到達度調査 15歳児対象)の結果があります。「科学に関連する職業に就くための基礎的な技能や知識が学べるか(学校の理科の学習によって)」という問いに肯定的に答えた生徒の割合が、日本は57か国の中で最低だったんですね。
実は、「学習していることが将来の自分の職業生活に役立つ」という意識は、学ぶ意義や価値を実感するための一つの大きな領域なのですが、これまでの日本の理科教育では、職業とのつながりをあまり実感できなかった。だから今、その意識を高めることが大事だ、ということになったのです。
–そのためにはどのような取組が必要でしょうか。
ある効果的な指導事例で、「将来、理科(の要素)を活かした仕事がしたいか」を3カ月毎に中学生に聞いたところ、肯定的な回答をする割合が最初は非常に低かったのですが、卒業のころには9割近くになっているのです。これは、科学者や技術者になりたいというだけではなく、「世の中のさまざまな仕事が理科に関連しているんだよ」ということを、教師が授業の中で伝え続けた結果なんです。つまり、指導によって子どもの意識を劇的に変えることができるんですね。これは、理科教育の大きな可能性を示す一つの事例だと思います。
また、科学技術が日常生活や社会を豊かにしていることや安全性の向上に役立っていることを知るのは、理科についての肯定的な意識醸成に直結すると思います。このような、今まで足らなかった部分を補い、強調していくことで理科に対する子どもの意識を喚起できたらなと考えています。
–当プロジェクトへのメッセージをお願いいたします。
小学校の場合は、専門性の高い人から理科や科学技術の話を聞くだけでも意欲が高まるという調査結果が出ています。ところが、実際は中学校の理科の免許を持っている小学校の教員は6~7%と少ないので、学校のニーズに対応して企業が支援する機会を提供していく、このようなプロジェクトはとても重要だと思います。
産業界にとっても、これからの社会を担っていくのは今の子どもたちなんだという意識を持つことは必要ですし、ぜひ子どもの育成に協力してもらいたいですね。
そして、学校は受け入れを負担と感じないで積極的にサポートを取り入れられるような、一種の「文化」を作っていくことが大切だと思います。
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■小倉康氏が関わる「JST理科教育支援センター」の「理科支援ネット」 http://rikashien.jst.go.jp/